前回お伝えしたブラジル先住民の椅子展も残すところ1週間となりましたが、今回は展示している東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)についてご紹介します。
このアール・デコ様式の建物は1933年に竣工したもので、フランス人の芸術家アンリ・ラパンと宮内省の技師によって設計されています。(詳細は公式サイトへ)
朝香宮家の自邸として使われた後、首相公邸や迎賓館を経て美術館となりました。
建築予算は青天井だったのではないかと思われますが、やたら絢爛豪華になることもなく適度な装飾と要所を押さえた材料の使い方で品の良い意匠になっています。
玄関前には狛犬が鎮座しております。アール・デコと狛犬の組み合わせを見れるのは世界でもここだけではないでしょうか。なぜ狛犬が配置されたかはわかりません。
中に入ってすぐのホールに面した階段です。チーク(多分)と3種類の大理石とブロンズの組み合わせですが、年月が経ったせいもあるかもしれませんが派手さはそれほど無く渋みを感じます。
階段の意匠です。時折このような非常に装飾的な意匠がありますが、ワンポイント程度なので食傷気味になることなく楽しめます。
いかにもアール・デコな、装飾を排した窓際の壁は結構気に入っている場所で、凛とした空気感と柔らかさを同時に感じさせてくれます。
2階の縁側的な廊下です。全体的に暗めな他の部屋とのコントラストが際立ち、静かに中庭を見て時間を過ごすことができます。
上の廊下に面したバスルームです。青みがかった大理石と廊下を介して入ってくる光が爽やかです。
北のベランダと呼ばれる天窓のある団らん室です。リビングといえば南向きが一般的ですが、北に面して大きな窓を取ると均質な光が得られるので実は日中過ごすのに向いています。ただ、北に建物が迫っていると暗くなってしまうので、一般的には都市部でこのような空間を持つのは難しいのが実情です。
つまり、ここはとても贅沢な空間ということになります。
北の間のディテールです。浮造り加工を施したチークと布目のタイルが非常に効果的で、宅内に別荘があるような雰囲気を醸し出しています。
裏動線の階段の意匠です。ここもあっさりとしていながらプロポーションが良く、好きなポイントです。
新館との中廊下に誂えられたガラスのパーティションです。
近寄ってみるとなかなかおもしろい作り方をしています。
今回ご紹介したのは建物のほんの一部で、個人的に気に入っている場所だけなので、是非実際に訪れて隅々まで見学してみてください。
レバーハンドルや換気口などまでとても凝っているのでじっくり楽しめると思います。
庭園美術館というだけあって立派な庭園があるのですが、そちらも訪れた時に楽しんでください。(柳本)