今回は床仕上げについて書きます。
床仕上げは住み始めてからの変更が大変なので、内装の仕上げを考えるときは最初に床のイメージから決めます。
住宅の場合、施主側に明確な希望がない場合はまずオークのフローリングで提案しますが、これはやはり価格がこなれていて性質的にカバーする範囲が広く色味的にも壁や天井で合わせる色や素材の選択肢が幅広いというのが大きな理由です。
杉、ヒノキや桐といった針葉樹系(柔らかく肌触りも良く温かみがあるが傷が付きやすい、色味は和のイメージに寄りやすいが比較的万能)ウォールナットやチーク、ローズウッドといった濃色南洋樹系(固くて丈夫だが触感がやや冷たい、色の印象が強い)もよく使われますが、合う内装や家具、ライフスタイルの方向性が限られるので好みがはっきりしていないとおすすめできません。
また、地産地消という考え方もありますが、流通しているものに針葉樹が多いのと、ナラやタモといった扱いやすい広葉樹は中国やヨーロッパから来た材のほうが安いこともあり、なかなか採用が難しいというのが現状でしょうか。
個人的な好みとしてはチークかオークなのですが、良いチークはかなり高額になりますし狭い家には少々印象がきついのでオークにします。
素材を決めたところで今度は仕上げ、一枚の幅、長さなどの選択に入ります。
仕上げは木の触感が味わえるオイル仕上げ(染み込むタイプ)か汚れや傷がつきにくいウレタンやUV系塗装(塗膜を張るタイプ)がありますが、後者の場合触感は樹脂になってしまいます。
せっかく木の床なのに木の触感を捨てるのはもったいないと思っておりますので、ここは迷わずオイル仕上げにします。
家にいる時間の殆どを架空の敵との戦いに捧げている3才児がいるために傷や染みは付くでしょうが、ある程度は味わいとしてあまり気になりませんし、あまりに酷くなったら表面を削ればきれいになります。
ちなみに、オイルやウレタン以外の仕上げとして家具などに使われるソープフィニッシュというのもあり、これは石鹸水のわずかな油分で保護するため肌触りも見た目も一番元の木の状態に近いのですが、床だとメンテナンスをかなり頻繁に行わなければいけないので相当な覚悟と自信のある方にしかおすすめできません。が、仕上がりはとても良いので我こそはという方はチャレンジしてみてください。
また、オイル仕上げの中でも着色するタイプと無着色のタイプ、最近はオイルで濡れ色になるのを抑えたタイプなどもありますが、後々メンテナンス的に楽なのは色合わせを考えなくて良い無着色のタイプで今回採用するのもこのタイプです。
オイルは1年に一度程度メンテナンスできると理想的ですが、裸足で歩いているだけでも人間の油分で勝手に補給されます。がんばって2年に一度くらいは塗りたい(ウエスで拭くようなイメージなので簡単ではある)ところですがどうなるでしょうか。
続いてサイズです。
フローリングの幅は一般的に90mm~180mmくらいが多く使われますが、今回は思い切って過去に一度も使ったことがない300mmのものを使います。(一番上の写真が使用予定材のサンプルです)
これだけ幅があると木目がしっかりと楽しめ、いかにも木の上を歩いているという感覚が強まるのではないかと楽しみにしています。
本当はこのような幅の広いフローリングは別荘などの広い空間で使った方が映えるのでしょうが、狭い空間でも床に出る線が減るのでスッキリさせてくれるのではないかと期待しています。
長さは定尺だと900mm程度と1800mm程度が多く、その中でも長さ方向に継ぎ目のない1枚物と接ぎ合わせてあるユニというタイプがあります。
どれを選ぶかは好みの問題ですが、ユニより1枚物の方が高額になります。
今回は幅を優先で選んだため長さ2100mmの1枚物となり結構贅沢な仕様で、家全体の仕様の中でも床材が一番割高なものを選んでいます。
冒頭にも書きましたが、床は住み始めてからの変更が大変ですし、一番いたみやすい場所でもあるのでなるべく予算を割きたい箇所です。
フローリングの構成についても書きますと、完全な無垢、合板基材に2~4mmの単板を貼った3層複合タイプ、合板に1mm以下の突板を貼ったタイプなどがありますが、オイル仕上げの場合は突板では強度的に無理なので無垢か3層複合タイプの選択になります。
無垢の場合は幅広の1枚物などはかなり高価になりますが、3層複合であればだいぶ価格を抑えられ、今回も3層複合です。
また、幅が広いと暴れ具合も気になるところではあり、300mmもあると3層複合タイプの方が無難かもしれません。
3層複合タイプは床暖房対応品が多いですが、今回のものは非対応になります。
と、ここまで木製フローリング前提で話を進めてきましたが、床はフローリング以外にもタイル、モルタル、塩ビフロアなど様々な選択肢があります。
性能の回で書きましたが、今回は基礎に蓄熱する暖房を採用しており、そうすると、1階の床について本当に木製フローリングが最良かという疑問が出てきます。
せっかくの蓄熱を活かすのであればモルタルやタイル仕上げも有りかもと思うようになりました。
せっかくだから最近流行りのモルテックスなどを試してみようかと思い概算で見積もりをとったところ30平米程度に対して100万円オーバーだったのでこれはいくらなんでも贅沢すぎで却下となり、代わりに浴室で使うタイルで1階の土足部以外の床を仕上げることにしました。土足部はモルタルの金ゴテ仕上げです。
配管の関係で下地は乾式になるためタイルにヒビは入るかもしれません。(マンションリノベで2重床だとだいたいヒビが入るので)
タイルも無数の候補があるのですが、1階は少し冷たい雰囲気にしたいということもあり、上の写真にある、よく使うモルタル調のグレー系のものを選択しました。
ちなみにある程度の面積があって普及品の価格帯のものを選べば床タイルは平米9千円前後(材工)とそれほど高価な仕上げではなく、フローリングより安く施工できる場合もあります。
床材を部屋別でまとめると、LDKと子供室がフローリング、トイレ・廊下・洗面・浴室・寝室・収納がタイルとなります。掃除面でキッチンの汚れが気になるところですが、激しい油もの調理はあまりしないのでマットなどを敷かずにウェットシートで毎日ひと拭きすれば良いかなと思ってます。浴室は定期的にケルヒャーで、トイレは家族が座って用を足すのを前提にすれば来客時だけケアすれば大丈夫でしょう。
あとは床ではないですが足で踏む場所として階段があります。
計画では段板が裏も見えるような構造になっており、このような場合でよく使うのはタモやゴムといった硬い広葉樹の集成材ですが、今回は玄関から踊り場の板材の木口がちょうど目線に大々的に見えるため、集成材だと下の写真のように3cmピッチくらいで継ぎ目が出てしまい少々うるさくなってしまうと思い、タモの巾接ぎ材(無垢を20cm前後の幅で接いだ材)を使います。
おそらく気にならない人は全く気にならない割に金額的には結構上がってしまうので迷いましたが、ほぼ毎日朝晩目にするので後悔しないよう決断しました。
現場の方はようやく再開し無事上棟しました。
いつも思いますが、木造は上棟直後が一番良いです。
いよいよ大幅な変更もできなくなってくるので迷ってる部分を決めなければいけません。(柳本)