今回のイタリアは主にフィレンツェに用があったのですが、ついでに普通はあまり立ち寄らない街に行ってみようということになり、北イタリアにおける交通の要所であるヴェローナに行ってみました。
目的の一つとして、タイトルにもあります「カステロヴェッキオ美術館」(設計:カルロ・スカルパ)を見に行くことです。
古城を再利用し美術館に改修したと思っていましたが、1926年には一度美術館になっているようです。その美術館をスカルパ風にリノベーションしたのがこの作品で、彼の代表作となっています。
ただ単に古い物と新しい物を融合したというだけではなく、素材の使い方、光の入り込み具合、展示の方法、動線など感心させられるところがありました。
まずL型の建物の入隅付近にあるエントランスを入ると、彫像ギャラリーが現れます。部屋がいくつか連なってりますが、一直線に通路が見えており、アーチ状の壁と直線の梁が対比してなんとも不思議な感覚でした。また、素材もシンプルに塗り壁となっていて、表情を与えています。
光を取り入れる窓は印象的な格子がはめ込まれていて、また、奥に行くに従い細くなっている空間で光の調整を行っている感じで、彫刻などに上手く陰影を与え、光と視線をコントロールしています。
(ちなみに安藤さん設計のヴェネツィアにあるプンタ・デラ・ドガーナにも似たような格子が使われていました)
元々展示室であったところを吹き抜け空間にし、別の展示室とを結ぶ外部空間に変貌したところ。展示を見て回る際、何度もここを行ったり来たりする事になるわけですが、ここで一度展示を見る目をリセットする役割になっているように感じました。
この展示室はまた違った雰囲気で、壁には以前の壁画がそのまま残されていたり、昔の梁が残されています。こちらの建物は石やコンクリートで作られていても最上階の小屋組は木で組まれていることが多いため、下層階とは雰囲気が異なります。
確か、お城の塔の部分にある展示室だったかと思いますが、特徴的な階段が印象的でした。これもヴェネツィアにあるスカルパ設計のオリベッティ社のショールームで見られる階段や什器などの造作に何か通ずる物を感じます。(今回定休日で外からしか見られませんでしたが)