前回の続きになりますが、ブラザー・クラウス・フィールド・チャペルを見た後、ケルンに寄って同日にコペンハーゲン入りしました。コペンハーゲンの滞在は22時間だけでしたが、見ておきたいものが宿泊したラディソン・ブル(旧SAS)・ロイヤル・ホテルと街並みだけだったので比較的ゆっくりできました。このホテルはアルネ・ヤコブセンが建物、内装、家具等ほぼ全てを監修したホテルです。旧名のSASロイヤルのほうが認知度が高いと思いますが、2009年にSASがシェアを売って名前が変わった現在も建物のSASマークが消えていなくて、コペンハーゲン中央駅から出るとすぐにわかりました。
エントランスを入るとすぐに目に飛び込んでくるのがエッグチェアです。ロビーは思ったより小ぢんまりとしていて、変な威圧感はありません。スタッフもフレンドリーです。とはいえ、照明はアーティチョークやAJ、その他PHシリーズ、スワンチェアやセブンチェアの様々なバリエーション等で埋め尽くされていて壮観です。エントランスの時計もヤコブセンデザインのもので、ドアマンも雰囲気に合っています。
エレベーターホールもシンプルながら端正です。昇降ボタンや表示板も手が込んでいます。
廊下は凹凸と各室のエントランスをうまく組み合わせていますが、ユニバーサルデザイン的観点からすると若干入り口がわかりにくいかもしれません。
部屋に入ると、ヘッドボード側の印象的な照明が目に入ります。この照明は若干違和感を感じました。部屋にもスワンチェアとクッション付きのセブンチェアがあります。デスク周りの家具は合板を多く使っています。素材は安いものですが、上手に設計していると思います。
バスルームはタイルと大理石を使っています。設備的には古いので使い勝手が良いとは言えませんが、ひどく不満が残るほどでもありません。便器が片持ちなのもポイントです。
クローゼットやセーフティーは左側の大きな引き戸を開くと出てきます。この時代の西洋のホテルで引き戸を使ってるのは珍しいように思えます。
スーツケース置き場の壁にはステンレスのガイドが象嵌されています。目地や高さの揃え方は教科書のようです。
ドア枠と壁はチリを取らずに目地で納めています。少し目地が太めなのが時代を感じます。
今回の部屋は12階で、コペンハーゲン中央駅とチボリ公園が見渡せました。
現代の意匠設計の基礎となる納まりが多く、見ているだけで飽きません。ホテル側もそういう客に慣れているようで訝しがられることもありません。安いホテルではありませんが、コペンハーゲンの鬼のような物価からするとお手頃と言えるのかもしれません。(柳本)