快適な音環境 – 残響について

  • 2013/02/14
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ピアノのある家
以前、遮音と吸音について書きましたが、室内の音環境を左右するもう一つの要素として残響時間があります。残響とは、音がどの程度響く(残る)かということで、残響が長いと次に発する音と干渉して聞き取るのが困難になってきます。逆に残響が全くないと一つ一つの音は聞き取りやすいのですが、音が鳴っていない時に静かすぎて耳がツーンとする感じになります。一般的な居室で快適な残響時間がどの程度かといいますと、0.1~0.2秒程度になると良いと感じます。一般に狭い部屋ほど残響時間は短い方が快適なので、個室で0.1秒、居間を0.2秒程度を目安にすると良いかと思います。ちなみにコンサートホールなどは2秒程度が理想とされていますので、オーディオルームなどであれば居間より長く0.5秒程度あっても良いと思います。

また、新居や賃貸の内覧などでまだ家具の入っていない部屋に入った時に、妙に音が響いて会話が聞こえにくかったという経験はないでしょうか。一般的な住居の場合、仕上げの好みや必要な面積などが優先されることもあり、室内の残響について考慮されていないので定在波が存在(=特定の音が反響し続けて消えにくい状態)しやすくなっているためにこのような音環境になることがあります。実際は家具や家電やカーテンの存在により一般家庭で発生する音に対する定在波は消えることが多いのですが、部屋によっては家具が入った後でもテレビの音が一部妙に響いたりすることもあります。定在波の起こりやすい形状というのは直方体で、つまり普通の部屋というのは何らかの周波数帯において定在波が発生する可能性が高いです。ですので、予め定在波の起きにくい形状や素材を選定しておくと安心感は増します。現在お住まいの住宅で特定の音が響いて困っているという場合は、部屋のある一面の壁に布を張ったり床の一部にラグを敷いたり部屋の角に家具を置いたりすることで消える可能性があります。

ちなみに、写真の住宅は1階のLDKに吹き抜け状に面する2階にグランドピアノが置かれているのですが、天井が勾配になっていることと天井のスリット内に吸音材を設置することで不必要な残響や定在波をカットするように考えてあります。壁は左官なので、一般的なクロスに比べると反響しやすいのですが、居間でピアノの音を聞いても違和感のない音場になっていました。(柳本)