お風呂は好きでしょうか。
私は自宅がバランス釜で膝を抱えないと入れないような狭い浴槽なので湯につかることはほとんどありませんが、のびのびと入れる浴槽には憧れます。基本的に湯に浸かるというのはリラックスして体を温めるというのが目的かと思われます。こういった場合、視覚効果というのが非常に大きな意味を持ちます。全く同じ温湿度の部屋にいても、例えば室内の色が寒色系か暖色系かで体温に差が出ますし、色の彩度や明度によって副交感神経の働きに違いが生まれたりするようです。故に、基本的には浴室の色はトーン薄めの暖色系でまとめるのが理にかなっていると思います。また、色以外でも水の流れる様子や音などもリラックス効果を高める要素になります。
昨今、足し湯する時は給湯器側の制御でバスタブの下側に空けられた穴からお湯が出てくる方式が大多数を占めていると思われます。やはりバス水栓がついていると邪魔になることが多いので当然の流れかもしれません。しかしながら、スパなどでひっそりと設えられた湯口からたおやかにお湯が注がれる様子に心を癒されたことのある方も少なくないのではないでしょうか。あれが家にもあるとより楽しくなるのではということで井草の家では既製品ではないバス水栓を設計することになりました。
形状はもちろんのこと、お湯の流れ方や手をついてしまったときの安全性、耐熱性やメンテナンス性(あとコストも)などを検討してようやく素材とカタチと設置方法が決まりました。最終的に設置するまでには実際の水の出具合などから微調整が必要になると思います。この形状だとちょっとしたカウンターにもなるので植物など飾っても良いと思います。緑と水音でより一層豊かな時間を過ごしていただけることを期待しています。(柳本)