天然木フローリングの樹種や仕上げの話

フローリングの選び方リノベーションする際に床仕上げを全く変えないということは稀です。

どのような性能のフローリングにするかは防音と床暖房を入れるかどうかが大きな要因となり物件ごとに検討が必要になりますが、今回は主に天然木フローリングの樹種と仕上げについてのお話です。

フローリングの構造天然木フローリングの構造は大きく分けると3つになり、完全に無垢タイプ(右下)、2~3mmの無垢板をベニヤに貼った複合タイプ(左下)、1mm以下にスライスした突板を貼ったタイプ(上)があります。

施工後の動きの大きさは無垢>複合>突板の順番で床暖対応や直張り対応が一番多いのが突板タイプですが、どうしても素材の厚みを感じられず、ものによっては経年劣化で表面が剥がれてくることもあります。
無垢の場合は施工が悪いと隙間が大きくなったりむくんできたりといった不具合が出やすいですが、然るべき措置をして施工することでたいていの不具合は防げます。
無垢と突板の良いとこ取りをしたのが複合タイプで、基盤がベニヤで接着剤を使っているということを気にしなければ施工性だけではなくコストパフォーマンスにも優れた商品が多いです。
無垢と複合タイプは完成してしまえばほとんど見分けが付かず、傷がついても表面が剥がれてくることはなく、さらに表面を削ることで新品同様にすることもできます。

また、天然木フローリングは基本的に表面を塗装で保護しますが、塗装も木に浸透して膜は作らないため木の質感を感じられるオイル系、表面に硬い膜をつくるので触った感じは樹脂になるウレタン系、薄い膜はできるが硬くはないので木の質感も楽しめるワックス系に分かれます。

一般的な集合住宅によく使われるのはウレタン系で、塗装費が安く水が浸透しないためメンテナンス性が良いのがメリットですが、樹脂なので経年劣化があり、塗膜が割れた際には補修が困難というデメリットもあります。
ちょっと前まではウレタン塗装はツヤツヤなものばかりでしたが、最近はオイル塗装に似せたマットな仕上がりのものも出てきて表面のバリエーションは増えています。
オイル系とワックス系は表面の保護という観点では弱く、水に濡れたまましばらく放っておけば染みになりますし、硬いものを落とせば凹んだりえぐれたりしますが、手触りの良さが何よりのメリットです。
オイル系は浸透により木が濡れ色になり、ワックス系は木材に浸透しないため塗装後も木の色が変わらず、白木系の自然な白さを活かしたい場合に向いてます。

そこで、無垢や複合系のように表面を削るメンテナンスができる場合はオイルかワックス、突板の場合はウレタン系というのが理にかなっているように思います。

ちなみに弊社の事例ですと、リビングダイニングにおいては8割以上の方が無垢か複合タイプでオイル系塗料で仕上げたタイプを選ばれています。

その他にも選択するポイントとしては樹種、一枚物かユニ(継ぎ接ぎ)かなどがあります。

まずは樹種ですが、圧倒的に多いのがオーク(ナラ)です。
価格が硬さと施工性のバランスが良く、比較的あっさりとした感じから荒々しいものまで木目のバリエーションも豊富です。
中間的な色味も様々な壁や家具に合わせやすいので世界中で広く使われている素材です。

オーク無地上の写真はオークでオイル塗装の中でも白っぽくおとなしい表情のタイプで幅が広く比較的長い一枚物なので材料として採れる量が少なく多少高価です。

オーク120x909こちらの写真もオークのオイル塗装ですがおとなしい表情と荒々しいものを織り交ぜていて一枚の長さは90cm程度なので比較的お手頃です。

オークユニ上記2枚の写真は一枚物というタイプで、一枚の板に継ぎ目がないのですが、こちらはユニタイプで一枚の中でも複数の木が接着されていて短い部分だと20cm程度で材料が切り替わっています。原料としては細切れでも使えるため一番金額を抑えやすいタイプです。

ここまでは全て無色のオイル塗装でしたが、オイルでも着色することもできます。

オーク塗装こちらもオークですが、一度黒っぽいオイルを塗ったあとで白い顔料を被せて拭き取ったものです。

ヘリンボーンこちらもオークで色を濃い目にしていますが張り方がヘリンボーンという根強い人気のあるパターンです。材料費はそれほどでもないですが手間代が通常よりはかかります。

チークとヒノキこちらの例は手前がチークのクリアオイル塗装、奥がヒノキのワックス仕上げです。

チークやウォールナットのような濃い色の樹種は一般的に非常に硬いものが多く、熱伝導率も高いため、ややひんやりした触感になります。一時期に比べると人気は落ち着きましたがファンは多く、高価です。密度が高いため熱による動きが小さく床暖房用としても多く用いられます。

一方ヒノキや杉、ツガなどの針葉樹は柔らかく触感は温かみがあり、主に和の空間によく使われます。伸び縮みしやすいので床暖房用は特別な処理が必要になります。

上記の例のほかにも、サクラ、カバ、アカシア、ローズウッド、カリン、タモ、ベイマツ、ニヤトー、ピンカド、オリーブ等、多くの樹種がフローリングになっていますのでお好みの一品を探してみてください。

プリントフローリング余談ですが、こちらは天然木ではなくプリントされた木目です。印刷技術の進化もあり、ぱっと見は突板フローリングと変わらない感じがしますが、よく見ると同じ木目パターンが繰り返し出てきてるのがわかります。木目の薄いバーチなどのタイプであればあまり気になりませんが、木目が強いほどリピートが見えてきます。

結論としてどの素材が良い・悪いということはなく、自分の生活に合っているかの見極めが重要です。
床の張替えは簡単にはできないので、長く付き合う相手としてコストだけではなく総合的に検討していただければと思います。(柳本)