今回の旅で最後に訪れた建築物は磯崎新による上証ヒマラヤセンターです。
上海には日本人建築家による大きめの建築物がいくつかありますが、その中で個人的に一番見てみたかったのがこれでした。
直方体の間に洞窟のような有機的な形状が入り込んでいる突然変異的な形態ですが、完成イメージCGとはかけ離れたポリゴン的ハリボテ感が当初話題になっていて、ちょうど同じ年に上海万博で日本館がこれ以上に酷いポリゴン感で、中国の施工が酷いのかと思いきや竹中工務店の施工だし他国(特にイギリス、韓国あたり)のパヴィリオンは出来が良かったようなので何か悲しかったことを思い出します。
実際に洞窟の壁は近くで見るととても粗く、これが2010年当時の施工技術の限界だったということは無いと思いますし、これで良しとするのはなかなかの勇気がいるように思えます。
ただ、全体で見ると直方部と有機部のバランスは良いと思いますし、歩いていて視界が変化するのも楽しく、この粗さは意外とすぐに慣れたというか気にならなくなりました。
洞窟部は反対側まで貫通しています。
洞窟内に入るとベンチなどがあり、適度な静けさでゆったりと過ごすには良い空間です。
中は薄暗く、粗い壁もなんとなく艶やかに見えてきます。
天井に平坦な部分があったほうが良かったのか、全てを有機形状で覆ったほうが良かったのかなど考えるのも一興です。
建物の前には対峙するかたちでジャングルジム状のインスタレーションがあり、訪れたときは閉まってましたが登れるようになってます。
ショッピングセンター部に入るとなぜだか急にマゼンダな空間になっています。
5層が単色に染まるというのはなかなかインパクトがあります。
マゼンダな空間の奥には普通の照明のエリアがあり、子どもと楽しめるようなつくりのレストランがありました。
通りを渡って横から見るとなかなか端正な一面を感じられます。
正面から見るとジャングルジムが洞窟を隠してしまっているのが残念です。
ヒマラヤセンターは唯一タクシーでしっかりと到着できた建物で、現地の方々にも比較的人気があるようなことを運転手が言っていたように思います。
遠目にはシンプルな印象ながら近づいた時に驚きを感じられるというのは良い建物と言えるのではないでしょうか。
場所はマグレブ(リニアモーターカー)終点の「龍陽路駅」から地下鉄で一駅の「花木路駅」直結です。
建物にはショッピングセンターの他、美術館やホテルも入っているので時間があればゆっくり楽しむことが出来ると思います。(柳本)