目黒の料理教室(仮称)工事途中経過 ~ 制限から生まれるアイディア

簡易な引き戸今回は躯体や予算といった制限があるからこそ生まれたアイディアの一部をご紹介します。

上の写真は調理部と試食スペースを間仕切るための引き戸ですが、間仕切る巾が3.6mあることと、間仕切り引き戸の収納スペースをなるべく小さくするために、薄くて幅が広く、かつ軽量な引き戸が必要となりました。一般的に大きな建具は金額も高くなってしまいますが、今回は既成品のアルミ形材とプラダン(プラスチックダンボールの略)という安価で軽くて丈夫な素材の組み合わせで制作しました。プラダンはやや厚めの透明タイプにすることでアンティークのモールガラスのような風合いを持たせ、いかにもプラスチックの安っぽい雰囲気は減らせたと思います。かなり光を透過するのでいかにも隠してますという感じもなく、自然と試食に集中できる間仕切りになりました。価格は同じ大きさの木製の建具に比べて2/3くらいです。

実験用シンク元々のキッチンはリノベーション後には予備の洗い場になるため、老朽化したミニキッチンを撤去することになりました。スペース的にも狭く、一般的なミニキッチンだと立つスペースが苦しくなるので簡易的な実験用シンクに交換することにしました。陶器なので食器洗いには少々気を使いますが、大きさの割にはコストを抑えられるのとシンクとして無駄な奥行きが無いので洗い場としてのパフォーマンスは悪くありません。メインのシンクでなければ選択肢に入れても良いと思います。

広めの廊下とアンティークブラケット最後は玄関からの廊下の巾と天井の高さの関係です。今回のお部屋は一番天井が高いところでも2.2m程度しかなく、やや圧迫感を感じる高さです。そこで玄関に入ってすぐの天井高さをさらに下げ、廊下を抜けてから天井を上げることで相対的に開放感を感じられるようにしています。廊下は通常よりも巾を広く取ることで天井の低さの割には狭苦しさを感じず、さらに奥の部屋の光を玄関まで届けるのにも一役買っています。

予算が無限にあって土地が無限に広い中での設計の方が楽と思われるかもしれませんが、実は制限がある中での設計には考えるきっかけが詰まっていて楽とは言いませんが楽しめるものです。(柳本)