住環境における建物の蓄熱性の役割


結露
住環境においてかなり重要なのですが、割と話題になりにくい要素に建物(厳密には素材)の蓄熱性があります。読んで字の如くですが、蓄熱性とは熱をどれだけ貯めこめるかの性質です。

先週の土曜日、都内は20度近くまで気温が上がりました。すっかり春の陽気でしたが、事務所の入っているビルの中は冬の気温で建物の外部が結露する(上の写真)という珍しい状況となりました。

ここで一旦、なぜ結露するのかということを簡単に説明します。(中学校の理科の内容なのでわかる方はこの段落を飛ばして下さい。)空気中に含むことができる水蒸気の量(=飽和水蒸気量)というのは温度によって変化します。温度が高い方がより多くの水蒸気を含むことが出来ます。例えば空気1立米あたり摂氏20度だと17.2gの水蒸気量を含むことが出来ますが、摂氏10度だと9.4gしか含むことが出来ません。そのため、仮に17.2gの水蒸気量を含んでいる20度の空気(湿度100%)が10度まで下げられると、17.2-9.4で1立米あたり7.8gの水蒸気が空気から溢れることになります。この溢れた水蒸気が窓などに付着する状態が結露です。冷蔵庫から出した缶ビールに水滴がつくのは、缶ビール周りの空気が冷やされるために空気中の水蒸気が缶ビールに付着するわけです。一般的に冬の結露というのは外気温に対して室内の温度が高いため、断熱の弱い個所で空気が冷やされ、飽和水蒸気量超えてしまって水滴が壁や窓に付きます。ただし、部屋が乾燥していると元々水蒸気量が少ないために気温が下がっても飽和水蒸気量以下となり結露が発生しません。ですので、断熱が弱いのに結露しないというのは、それはそれで非常に体に悪い状態であると言えます。また、結露を抑える手段として吸放湿性の高い仕上げ材を使うという方法もありますが、これについてはまたの機会に。

今回、ビルの外部が結露したのは外温度に対しビル本体の温度が極端に低いため、ビルが冷蔵庫から出した缶ビール状態になって結露したということになります。では、何故外が温かいのにビルが冷えたままなのかということですが、これは建物の蓄熱性が高かったことに起因します。何となく「蓄熱性が高い」というと良さそうに思えますが、断熱されていない場合は「冷たさ」を貯めこんでしまいます。蓄熱性の高い建物は一旦冷え切ると暖まるのに時間がかかるため、今回のような事態も発生し得るのです。逆に、しっかり外側から断熱した上で内部を温めると簡単には冷めにくい構造体となるので、限られた時間帯(例えば電気料の安い深夜のみなど)に暖めておけば残りの時間帯に暖房を切っていても室内は暖かいままに保たれます。

住居となる建物は木造、鉄骨造、RC造が一般的ですが、蓄熱性の高い構造体(仕上げは別として)は上から順にRC造>木造>鉄骨造となります。従って、特にRC造の場合は外側からしっかり断熱すると光熱費を抑えやすくなります。もちろん、予算や意匠上の好みでコンクリートをそのまま見せることを希望される方もいらっしゃるでしょうが、この辺の特性を理解した上で建築を進めないと後から大問題になります。賃貸の場合も、特に北や西に外部に面するRC打ち放しの壁がある場合はかなり劣悪な住環境になり得るので諸条件の一つとして覚えておかれた方が良いと思います。ちなみにログハウスのように完全にある程度の厚みがある木で覆われている場合は木自体の断熱性能がそこそこ高いのと吸放湿性が非常に高いため、外部に断熱材を設けなくてもそこそこ快適な住環境が得られます。(柳本)