3月24日まで開催されている「HOUSE VISION 2013」に行ってきました。7つのブースからなる展示会で「新しい常識で都市に住もう」というのが理念とのことです。割と周囲の評判は悪かったので覚悟して行ったのですが、それなりに得る物もあったと思います。
01.伊藤豊雄xLIXIL
「縁側や土間のある暮らしを未来に取り戻す」ということで、早速理念から外れてやしないかという内容でした。それとも別荘地のようなプランを都市に持ってくるというのが新しい常識でしょうか。この展示形式だと外部を覆うテントがありきの提案なのか、無いことにして受け取るべきなのかというのも戸惑うところがありました。立ち入り禁止の土間を掃除しているスタッフの姿に何か釈然としないものを感じました。
02.藤本荘介xHonda
「三層のレイヤー構造で段階的に内と外を融通させる」とのことでしたが屋根が全て透明ガラスなのでレイヤーを感じることは出来ませんでした。写真はLIXILの泡(というかムース状)の風呂とHONDAの歩行アシスト機です。泡の風呂は一見プラスチックの塊に見えるほどのキメ細かさで、触って初めて泡が出続けていると気付くものでした。非常に気持ちよさそうです。歩行アシスト機はおそらく歩行困難者用だと思いますが、普及して価格が下がってもう少し簡易になると中腰作業が続く時にも使えそうで、背の高さが違う人が使うキッチンの高さ問題も解決しそうです。
03.山本理顕他x未来生活研究会
いわゆる集合住宅ですが、複数の家族でぶつかりあいも含めお互い学びあってコミュニティを形成していこうという提案です。東雲キャナルコートを一歩進めた感じでしょうか。模型のスケールと観覧車の比率が面白く、悪戯写真への欲が抑えきれませんでした。
04.杉本博司x住友林業
ここの茶室「雨聴天」は水澤工務店施工で今回の目玉といっても良い展示だと思います。中に入れないのが残念です。光学ガラスを使った沓脱ぎ石もきれいでした。
05.坂茂x無印良品
家具を構造として使うというのは阪神大震災で家具が支えになって助かったという話がきっかけで設計されたはずで、調べなおしてみたら1995年の作品でした。
06.成瀬・猪熊建築設計事務所xTOTO・YKK
最近外壁面の緑化はメジャーになり工事現場の防護壁でも採用されるほどですが、これは屋内側の壁面を緑化するというものです。是非テントなしで展示してほしかった。そして展示会のトイレを全てこれにしてみてほしかった。
今回一貫して感じたのは体験できないもどかしさでした。建築って外から見ていてもわからないものではないでしょうか。
07.東京R不動産x蔦屋書店
最小限寝室や並んでバスタブに浸かる居間など、好みさえ合えば実現できるリノベーション案です。ちょうどテレビ収録と重なってしまい落ち着いて見れませんでしたが、一般の方が一番興味を持って見れる展示かもしれません。奥にはDIYツールの展示もあります。
文句が多くなってしまったのは反省すべきところですが、今建築設計者に求められていることは何かということを考えさせられ、1800円を支払って得る経験として有意であったと思います。設計に関わらない人がどう見るのかも興味があります。鑑賞後、John Maedaのこの言葉を思い出しました。(柳本)
Designers create solutions – the products and services that propel us forward. But artists create questions — the deep probing of purpose and meaning that sometimes takes us backward and sideways to reveal which way “forward” actually is.(概訳:デザイナーは解決策、即ち我々が前進するための製品やサービスを生み出すが、アーティストは目的や意味を深慮することで真の前進とは何かを探求するための試行錯誤へと誘う問いかけを創造する)(引用元:wired)