住宅設計者の自宅設計 04 平面が決まるまで



前回、少し唐突に最終の平面発表となりましたが今回は平面決定プロセスについてお話します。

話は計画初期に戻りますが、普段新築の場合と同様に計画初期に役所に隣地の建築概要書を見に行きました。

建築概要書は誰でも閲覧することが可能で、施主、設計者、施工者の情報と面積や高さなどの基本的な建物の情報、配置図、案内図などが記載されています。何かと役に立つ情報があったりするので例えば土地を買う方なども購入前に見てみると良いかもしれません。

今回の収穫は、この時点では空き地だった南側隣地の概要書が既に出ており(=確認申請済みということ)施主や施工者の情報が得られました。驚いたことに、隣地の施主の住所が私の住所と同じ。一瞬変な夢でも見てるのかと思ったほどですが、偶然にも同じマンションに住んでいる方でした。

凄い縁だなと思い、直接ご挨拶にでも伺おうかと思いましたが、こういう仕事をしていないとなかなかわからないことでもあるのでいきなり行くと気持ち悪いかもと思いとどまり、とりあえず施工者側を通してこちらの立場を説明してもらい、北側の立面図を見せてもらえないかと交渉し、無事情報をいただきました。

こうして幸運にもまだ建っていない南側の家のこちらに面する窓等の計画が予めわかった上で、改めてプランニングを見直します。

最初に決めるのは一番気持ちよく過ごしたい場所になるのですが、我が家の場合それは2階のデッキで、2階南側の中心に据え、隣地側には高めの壁を立てて周囲の目線を気にせず過ごせるようにします。

続いて、バルコニーに植栽を置いてキッチンで作業中に眺められるようにという妻の要望に従いキッチンはバルコニーの北、西、東のいずれかになるのですが、ここで階段との関係を考えることになります。できれば来客時にキッチンが目につかないほうが良いので、今回だと階段を上ってリビング的な場所までの動線にキッチンが来ないのが理想です。

では階段はどこが良いかとなると併せて玄関の位置も検討することに。当初のプランでは玄関は道路側の南に面していたのですが、お隣の玄関が北に面していることがわかり、出合い頭はできれば避けたいので道路側の西面に変更。西面でも南側、北側、中間と考えられますが、一旦玄関を離れ、階段の踊り場に本を読むベンチを設けたいという思いが出てきて、そこの窓から抜けが欲しいと思うようになりました。お隣の配置を見ると車用のスペースなのか道路側である西側を割と大きく空けて配置されており、こちらはそこまで空ける必要がないので南西角辺りだと良さそうなので階段は南西で仮決め。

すると玄関が西面の北側か中央かになりますが、玄関土間を広く取りたいということは玄関も居室のように考えると玄関ドアを窓のような捉え方にした方が一石二鳥です。窓というのは壁や天井に寄せて設ける方が光の取り入れ方をきれいにできますし、寄せた分壁面が大きく取れるので落ち着いた空間になりやすいという面があります。そうなると今回の玄関も北側の壁に寄せた方が良さそうです。単純な玄関ドアとして考えると壁際ではない方が良い面もあるのですが、自宅なのでよしとします。

ここでキッチンの位置に話を戻すと南西の階段から上がってくるのでバルコニーの西側はスペースがなくなり東か北。東となると階段から遠くなり生活動線上面倒なので北に決まり。

そうなるとリビングダイニングは階段との関係から建物の西側。ルーフバルコニーの緑などを感じながらゆったりしたい一方で、そういう時はあまりテレビとかの存在を感じたくないということもあり、くつろぎスペースとテレビを見るスペースを分けることにします。とはいえ、この狭い中で距離を取るのは難しいためダイニングを挟むことでせめて心理的な距離感を取ることに。ゆったりする分には実はそんなに面積は必要なく、大人二人が座れる程度のスペースを階段とルーフバルコニーの間に取り、テレビ用のスペースは階段の北側に。

床仕上げとして畳は必ず欲しく、当初はテレビ前を畳にしようかと考えたのですが、どうもこの狭い中で床の素材が分断されるのはうるさいような気がします。畳の用途としてはゴロゴロしたいわけですが、これもまたそれほど広い必要はなく大人二人が寝れるくらいで良い。それであれば階段の上に小上がりを設ければ良いかとなりました。

この時点で2階に残されたのは東側で、ここは将来子供室で当面フリースペース。ひょっとすると落ち着いて食事をするためにしばらくダイニングとして使っても良いかと思ってます。そうするとリビングダイニングは当面子供の遊び場として広めに取れます。

1階に戻って玄関土間と階段以外の検討に入ります。一旦植栽に目を向けて、1階の洗面、風呂や寝室からも眺められる庭がほしい。この2部屋はプライベート具合が大きいので敷地の奥が向いている。建物は密集しているので冬場は直射日光はあまり望めないものの、それでも敷地の隙間から多少明るさは望めるので南東の角を庭用に取ることにします。こうするとルーフバルコニーと1階の庭が並ぶ形になり、ルーフバルコニーの先に庭木が見えたり、1階に光が落ちやすくなったりといったメリットも産まれます。

庭に面して寝室と洗面室の配置をどうするかですが、洗面と風呂は続き間で両方から見えるようにとなると庭の北側はスペース的に厳しいので庭の西側にします。必然的に北には寝室を、残った北の真ん中あたりに収納類が来ます。ウォークインクローゼットは寝室から直接入るというのが一般的ですが、洗濯スペースも兼ねていることと、寝室をなるべく落ち着いた空間にして不要な開口を減らしたいということが重なり廊下側から入るようにしています。この場合、寝室からウォークインクローゼットまでの動線が外から見えないようにするという気配りは必要になります。

洗面よりは風呂を庭に面させるという手法の方が一般的ですが、ゆっくり風呂につかりたいという日が夫婦共に数ヶ月に1度あるか無いかという家庭なので毎日の洗面、歯磨き、たまのアイロンがけなどの時に庭が見えることを優先しました。

トイレについては1箇所で済ませたいので家のあらゆるところからの距離を考えると階段を下りた辺りが妥当。リビングダイニングや寝室から適度な距離が取れているのは何かと良いです。本当はいざという時に浴室から裸で気にせず行ける場所が理想なので、できれば玄関に面したトイレというのは避けたいところでもありますが今回は他のメリットを優先しました。

私個人の数少ない要望であるトレッドミルをどこに置くかについては、音と振動の面から玄関土間に置くのが理想ですが、存在感が大きすぎなので床を下げて目立たなくするのが良いのではないかと考え、階段の下を深めに掘り込めばスペース的にちょうど良いのでそこで決まり。せっかくなら走っている時に外の植栽を眺めたいので西側の前庭に向けて大きな窓を設けそちらに向けて置くことにしました。

小ネタ的な話になりますが、小さな家をなるべく広く感じさせるための手法として遠いところまで視線を飛ばすという手法があります。今回は居室に一切建具を設けないという決断で家の端から端まで見通せるようにしています。このような状態で住むと主に音の面で問題が出がちで一般的にはオススメできませんが、あとから建具を付けようと思えば付けれるので実験的な側面もあり試してみることにしました。

と決まった後なのでそれなりに流れがあるように書けますが、実際はあちらこちらに思いが飛びながら何度か振り出しに戻ったりしつつ徐々に位置関係が確定しました。それからそれぞれの必要な寸法を少しずつ調整しながらなんとか建ぺい率内に収まるように落ち着いたのがこの平面になります。

最後に次回予告も兼ねて建物南側の断面を御覧ください。

階段廻りの高さの雰囲気などがわかるでしょうか。余談ですが、階段部分が一部3層になっており、このままでは実は3階建て扱いになってしまいます。こんなたかだか2畳のスペースのために3階建てになるのはあまりにバカバカしいので一番上の小上がりは2段ベッドみたいな考え方で建築ではなく置き家具として本体とは別に設置することにしました。

次回は高さ関係の話をしたいと思います。(柳本)