この家を設計するにあたり、一番のコンセプトとしては「家のどこにいても庭木が見える」というもので、結果的にトイレだけは諦めましたが、それ以外はすべての居室から前庭か奥庭の樹木が見えるようになっています。
庭の面積としては全体で10平米弱ですが、敷地面積が75平米しかない中での精一杯の配分です。
前庭は西側の道路に面しているので午後からは日が当たりますが、玄関前は60cm程度の奥行きしかとれず、スタジオ前は奥行きはややあるものの半分以上が2階の跳ね出し部分の下になります。
一方奥庭は面積は前庭よりは大きいですが、全面が建物に囲まれているので冬場はほとんど日照が見込めません。
私自身それほど植物に詳しいわけでもないのでこのような条件での植物の選定は難しいので勉強も兼ねて造園設計の専門家に依頼することにしました。
依頼先は色々探し回った結果、日本の原風景の再生を掲げて設計されていて、雑木林っぽい素っ気なさの中でバランスを上手にとっている感じが気に入ったので荻野寿也景観設計さんに頼むことにしました。
大阪の会社ですが関東でもたくさんの事例を手掛けられていて、ただ設計をして終わりではなく、現地を見た上で実際に植える植物を選んで運んで植えるところまでやっていただけるということで、大変心強く感じました。
流れとしては基本的にメールである程度要望をお伝えし、一度だけアトリエまで伺って打ち合わせ、その後は足場が取れた時点で現地にて再度打ち合わせをして施工となりました。
要望としては、3箇所の庭に各1本の中高木が欲しく、最初は落ち葉などが多いと近隣に嫌がられるかもと思い常緑でお願いしようとしていましたが、東京の土や気候だと常緑は育つのが早くて剪定が大変なので葉の少なめな落葉樹の方が良いのではないかと提案していただきました。
その他の内容は、いくつか実際に施工された現場なども見ていておおよそのイメージは掴めていたのでおまかせしました。(収穫できるものが少し欲しいと伝えたくらい)
実際の施工の際は実際に植える量の5割増しくらいの量の樹木を持ってきていただき、実際にあれこれ置いてみて採用する樹木を決定するという感じで非常にライブ感のある現場となっていました。
前面道路の幅員が4mも無いので施工も大変でしたでしょうし一時的に道路が通行困難となり近隣の方にもご迷惑をおかけしましたが、とても良い感じに植えていただき、最終的にはご近所にも喜んでいただけました。
まさに猫の額程度のスペースでしたが、なかなかの量が植えられました。
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それでは各室からの木の見え具合などご紹介します。
書斎から見る前庭
音楽&ランニングスペースから見る前庭
寝室から見る裏庭
LDから見る前庭の木
LDから見る裏庭の木
子供室から見る裏庭の木
バルコニーから見下ろす裏庭
なんと総勢40種近い植物がやってきました。
この時期はセトシロサザンカ、ヤブツバキの他ユーパトリウムリガストラムという舌を噛みそうな名前の花などが咲いています。
自分で計画していたら知っている植物を数本無難に配置して終わりだったと思うとつくづくお願いしてよかったです。
やはり餅は餅屋。勉強になりました。
順調にいけばブルーベリーやワイルドストロベリーなどが収穫できる予定で、いただいたメンテナンスシートを元にしっかり世話していきます。
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そして、ありがたいことに、早速「住まいの設計」に取材をしていただきました。
足がチラ見えしてますが、アンガールズ田中さんが見て回る「建築家の自邸探訪」のコーナーで取り上げていただきました。
子供の落書きと一緒にウルトラマンフレッシュマン(そんなのいない)を描いていただきましたが、いつまで上書きされずに残るでしょうか。
5月15日発売の6月号に掲載される予定です。(柳本)