建築と親しむ:目地

  • 2019/03/02

豊田市美術館建築の楽しみ方というのは人それぞれですが、楽しみ方の一つに目地を見るというのがあります。

目地とは何かと云いますと、素材と素材の継ぎ目のことで、身近な例だと上の写真のような石やタイルの目地があります。

あくまで個人的な好みの話ですが、この目地がしっかりと揃っている建築を見るのが好きです。

「目地を揃える」と言うと非常にシンプルで簡単そうに思えますが、部材の幅と間取り、下地の厚みなどをいろいろ吟味した上で異なる空間を繋いで目地を揃えていくというのはなかなかに大変かつ地味な作業になります。

予算が潤沢にあり、都度特注サイズで材料を調達できるのであれば話は別ですが、一般的な住宅の設計などをしていると、基本的には既成品の建材を使い、一般的なモジュールで間取りを構成しますので、必ずしも目地を揃えられるものでもなく、その場合はどこを揃えてどこを外すかという取捨選択が必要になります。

また、施工上全く逃げ(施工のズレに対する余裕)の無い図面というのも施工者の心理的ハードルを上げることになってしまい、無用なコストアップに繋がる可能性もあるため「最低限ここは揃えてね」という指示で現場が進んでいくというのが実情ですが、その指示も守られずに施工されることもあり、かといって性能に問題があるわけでもなく生活にも全く支障がないところでやり直させて工期を伸ばすのも何か違うような気がしてモヤモヤすることもたまにあります。

そんな感じで日々苦労している目地がきれいに揃っている建物(特に大きな建物)を見ると気持ちが高ぶってしまうわけです。

それではこれまでに高ぶった事例をご紹介します。

まずはパリの国立図書館(設計:ドミニク・ペロー)です。
パリ国立図書館ウッドデッキの割付と窓の幅を揃えて、設備の部分でもあるグレーチングも同じグリッドに合わせてありとてもわかり易い例かと思います。以降の事例も同様ですが、撮影箇所以外もきれいに整理されているので現地でいろいろ見ていただけると幸いです。

続いては1枚目の写真と同じ豊田市美術館(設計:谷口吉生)です。
豊田市美術館床面のタイル、壁のタイル、壁や柱の位置などがきれいに整理されています。日本で最も好きな建築かもしれません。

同じく谷口吉生設計の京都国立博物館です。
京都国立博物館壁、タイル、手摺、照明などが気持ちよく揃っています。このように少し離れた要素での目地の通りを見つけると心躍ります。

似たような例で東京都写真美術館(設計:久米設計)です。
写真美術館2階手摺のガラス目地と1階のタイル目地が揃っているのも偶然ではないはずです。

建物自体が局面で構成されていても揃えるところは揃えているという例で東京国際フォーラム(設計:ラファエル・ビニオリ)があります。
東京国際フォーラムタイルとコンクリート柱、天井までは一般的ですが、奥にある局面の手摺の割付もしっかりと揃えられています。

多少方向性は変わりますが揃えることに関しては日本建築も古来から一般的で、京都の龍安寺なども気持ちの良い空間になっています。
竜安寺

ただ、目地が揃ってなくても良い建築というのは多々あり、例えばソウルにあるDDP(設計:ザハ・ハディド)なんかもとても楽しい建築物だと思います。
DDP

弊社事例では個人住宅が主でスケール感の違いはありますが、その中にも揃っているところ、揃っていないところなどありますので、その背景なども想像しながら事例写真をご覧いただくのも一興かと思います。(柳本)