森に佇む別邸

<概要>(新築)
場所:栃木県那須郡那須町
延べ面積:190平米
構造:RC+木造 2階建て

小さな森の中、敷地高低差約4mの斜面地に建てた二拠点住宅(別荘)です。

北側に傾斜する土地に対し、半分埋まるように計画しています。
玄関から一筆書きで連なる2棟の建物が、プライベートな中庭を囲うように配置。
1、2階ともに森へ直接アクセスでき、自然の豊かさを最大限享受できる空間としました。

昭和40年代の高度経済成長期終盤、東京から移住あるいは別荘地として関東近辺に大量に開発された分譲地。
数十年の時を経てなお未開発のまま残っている場所がある。そこを次の世代である施主が引き継ぎ、周囲を含め再生させる試みの一部として建物を計画しました。

当初、森の中の傾斜面にピロティーを設け、眺望のある高床の平屋を計画していました。
しかし、周囲と比較し、異質なボリュームとなるため、敷地の高低差を活かした計画に変更。
低い地盤面を玄関、そこから上階へと移動していく一筆書きの動線・間取りとすることで、周辺の環境に溶け込む形とし、正面からは一見すると平屋に見えるプランとしました。
周囲の環境と密接するように開口部の位置や大きさを検討し、都会の喧噪を忘れられるような自然と一体化した
ランドスケープがある一方、一筆書き間取りの副産物として生まれた外と内の中間領域として存在する中庭もあり、建築と敷地とが応答した結果、広がりのある空間が出来ました。

建物はRC造と木造の混構造であり、エキスパンションジョイントで2棟に分かれているが、実際は異なる3つの箱状の構造物をコの字型に組み合わせたような形になっています。
それぞれを敷地いっぱいに配置しているため、隣地や前面道路を違和感なく建物内部に取り込むよう意図し、建物高さ、形状、開口部などを決めました。
一番大きな箱であるLDKは吹き抜けとして、南の木々の間から漏れ入る光を取り入れ、非日常を感じる気積の大きな空間は施主の一番の要望でもあり、構造・配置にも配慮しました。

道路を挟んだ正面の土地もきれいに整備されています。


玄関棟の妻壁は羽目板張り。
アプローチからのアイキャッチとしています。

敷地南側からの建物
2階のホール、ウッドデッキからも森へ降りることができます。

囲われた中庭では焚火やBBQなどプライベートなスペースで楽しめます。
一部タイル張りとし、メンテナンス性にも配慮。左の階段は、2階のウッドデッキへ繋がっています。


玄関には地窓から静謐な光が溢れます。

玄関棟はゲストルームとサニタリーで構成され、来客時のプライベートスペースをゆったり確保しています。

廊下、対面からの風景。
突板クロスで仕上げたアーチ状の通路の先にLDKが見えます。
アーチの入口で棟が分かれており、LDK棟の1階は大空間を確保する為、RC構造としています。

ゲストルーム
南側中庭に向けた窓からの風景を楽しめます。

小窓からは北側前庭が望めます。

1階のサニタリー
正面壁、洗面カウンターのタイルを一体的にデザイン。
洗面スペースとトイレのみ配置。使いやすくシンプルな構成です。

絞りを効かせたアーチ通路を抜けると、開放的なLDKが現れます。
北側には格子状デザインの大開口木製サッシ、中庭側にはフルオープ可能な3連木製サッシを設けました。
中庭側上部には異形ガラスを設置し、明るく開放的な空間としました。


中庭の風景
1階部分はRC造、曲面形状の庇を躯体から跳ね出しで設けています。
奥まった部分は、使用頻度の高い機材の置き場として利用するオープンスペース。左側扉の中は倉庫として利用。


LDKの南側、2階スラブ下のスペースにキッチンと大容量のパントリー、カップボードを製作。
キッチン正面の腰壁はR形状のデザイン。モールテックスで仕上げています。

ダイニングの壁には、施主オーダーのディスプレイ家具を取付。


北側前庭の風景を贅沢に取り込んでいます。
右側の建具のみ引き戸にしており、ウッドデッキへ出られます。

軒を大きく伸ばし、半屋外のようなスペースとして利用。

LDKの角にはHWAMの薪ストーブを設置。
大きな気積の空間ですが、薪ストーブを点けるととても暖かく、冬季でも快適に過ごせます。床暖房も完備。

蹴込み板と踏板を継いだシンプルな構造の階段で2階へアクセス。



2階ホール
半分建物に埋まっているように建っているため、ホールからも地盤面が近く、容易に森へ出られます。
葉を通して落ちてくる南側の陽光が美しく差し込みます。
大きなデスクを設け、開放的な空間でデスクワークや読書など行えるスペースとしています。

ステンレス鋼板と丸棒で製作した階段手摺
一部ホールのデスクに接合することで、強度を担保しています。


2階ベッドルーム
連窓の下部にヘッドボードを造作。壁付け照明や電源も確保しています。
北側、平屋の玄関棟屋根を越えて風景を取り込んでいます。

南側を長方形の窓で森の風景を額縁上に切り取り、開口を絞ることで落ち着いた空間としています。

ベッドルームの東側に2階のサニタリーを設けています。床タイルが浴室まで連続していきます。

洗面台、鏡などはチークの突板で製作しました。

ニッチ収納にはキャスター付きの洗濯籠、可動棚を設置。同じくチーク突板で製作しています。
PSのタオルウォーマーも設置。


在来浴室
床、壁、浴槽全面にテラゾー調のタイルをあしらった浴室。
南側の木製サッシはフルオープン可能な引き戸として製作しています。


浴室の北側にはサウナを設置。中庭側に窓を設け、風景を眺めながらリラックスできる空間。
壁、天井には熱処理したヒノキ材を使用。香りの効果でより一層リラックスできます。

ベンチの高さを2段設け、上部の熱をより感じられるように配慮しています。

サウナストーブはHARVIAの電気式を採用。ロウリュウも可能です。


サウナからは外気浴の為、2階のウッドデッキに直接アクセス可能。
水風呂とリクライニングチェアを設け、ととのいスペースとしています。

2階ウッドデッキから中庭へ降りることも可能。中庭でのレジャーを楽しんだ後
ベッドルームを通らずに直接、サウナや浴室・サニタリーに行けるよう来客時の動線を整理しています。