壁孔の家

壁孔の家 プラン<概要>
場所:東京都目黒区
面積:床面積94㎡
構造:壁式RC造

3人のお子様がいるご夫婦のための、築47年の3階建ての集合住宅のオーナー住戸(1階と2階の一部)のリノベーションです。

子どもの頃から過ごした思い入れのある家と緑が豊富で池もある庭を活かしたいという要望もあり、仕上げの面影を残し、リビングからは庭が一望できるようプランニングしました。

また、この建物は壁式RC構造で耐力壁が多く梁も大きいため、リノベーション前は面積の割に広さを感じられない状態で、計画するにあたっても壊せる壁が少ないため、分断された空間をどのように繋げていくかがテーマとなりました。

幸いにも元のLDKに隣接していた浴室と洗面脱衣室の壁はコンクリートブロックで壊すことができ、水回りを西側に移動することで階段ホールからLDKにかけてをスタディスペースで繋げた一体空間として、それに対して子ども室が面しているような形態をとることができました。

2階は元が広めの1部屋だったのですが収納が足りなかったためウォークインクローゼットを設けて寝室とのバランスを取りました。寝室は朝日が入れば良いので東に窓がある北側に、ウォークインクローゼットは洗濯物も干せるということで南側に配置しています。

壁孔の家 玄関から

以前は玄関ホールが広かったのですが、玄関として最小限のスペースとしてLDK側にスペースを確保しました。

壁孔の家 玄関ホール

玄関ホールからは階段下収納(鏡扉の向こう)とトイレにアクセスできます。階段室からの光を取り入れるために収納の上はガラスを嵌め込んでいます。

壁孔の家 階段ホール

ホールには窓がないものの、階段室とキッズスペースからの光である程度の明るさを保っています。

壁孔の家 リビングドア

ホールと玄関を仕切るドアは目隠し効果のあるガラスでプライバシーを保ちつつも双方の光が取り入れられるようにしています。基本的に木製の建具ですが、格子のみスチールとしてすっきりとした印象をもたせています。

壁孔の家 ドアのガラス

ガラスは望楼の家でも採用した雨粒をイメージしたデザインガラスです。

ダイニングビフォーアフター

ホールから見たダイニングスペースです。ビフォー写真の右手前の壁がなくなったことでだいぶ視界に広がりが出ました。

リビングビフォーアフター

リビングスペースは面積は変わっていませんが天井が高くなったのと窓の交換で明るい印象になりました。エアコン前のパイプは臨時の物干しです。

壁孔の家 リビングと庭

同じ方向ですがキッチン側まで引いて見た様子です。ダイニング部も天井を上げたために梁の大きさがより強調されたのですが、アクセントウォールとした壁全体の素材感が梁の印象を薄めています。

LDKとホールビフォーアフター

LDKから玄関側を見た構図です。ホールとの間も大きな梁がありますが、収納で紛らわせています。スタディスペースをホール側に伸ばすことでLDKとホールの繋がりを強調しています。

壁孔の家 リビング

リビングの収納棚は水平を強調する形態として横への広がりを感じやすくしています。スタディスペースの並びには元々所有されている収納を納めるスペースを設けています。

壁孔の家 白華モルタル

アクセントウォールはモルタルの白華現象を利用したオリジナルの素材です。施工時の温度や湿度で白華現象の具合が異なるため、唯一の表情が出ています。

キッチンビフォーアフター

キッチン脇のデットスペースになりがちなコーナ部分は斜めの開口と互い違いの可動棚で有効活用し、その脇に家電収納と冷蔵庫が並びます。

壁孔の家 洗面所

洗面脱衣室は梁下に洗面台を設けています。洗面台はコーリアンのカウンター一体型ボウルとタモを組み合わせています。

壁孔の家 階段

階段室は東に面した窓があるため明るい空間となっています。

壁孔の家 階段見返り

階段上からの見返りです。寝室との仕切りもガラスとすることで少しでも多くの光を1階のホールに届けるようにしています。

寝室ビフォーアフター

階段室へのガラスの周りは可能な限り収納として空間を最大限利用しています。

壁孔の家 手すり

寝室入り口の引き戸を開けた状態です。階段手すりは鉄骨で細めにしています。

壁孔の家 寝室の壁

正面の壁は骨材入りの塗装。左の壁はウォークインクローゼットとの仕切りですが、梁とずらしてスリットを設けて閉塞感をなくしています。

壁孔の家 ウォークインクローゼット

ウォークインクローゼットには古くからある箪笥用のスペースも確保してあります。真新しい漆喰の壁の中、味わい深さが良いアクセントとなっています。

壁孔の家 外観

今回は建物全体の外部塗装も行いました。竣工からほぼ半世紀経っているので近隣の方の記憶にも深く刻まれていると思われるこの建物が少しでも長く残るよう願います。