防音は正確に 遮音と吸音

  • 2013/02/01
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測定器

近隣からの騒音に悩んでいる方は多いと思います。今までに私が設計させていただいた方の中からも「防音をしっかりしたい」というご要望を度々頂きました。中には簡易的にご自身で防音対策をしているという方もいらっしゃいましたが、ほとんどの方が遮音対策と吸音対策を混同されているようでした。実のところ、建築設計を生業としている方でも防音について詳しい方は限られており、間違った防音対策をしている住宅も少なくありません。

まず、遮音と吸音は何が違うのか。これはご存知の方も多いと思いますが簡潔に述べますと、遮音は今いる部屋と外部間を透過する音量を減らすことで、吸音は今いる部屋で鳴っている音の室内での反響を減らすことです。例えば隣の音がうるさくて眠れないという場合は遮音、キッチンでの洗い物の音がうるさくて同じ空間内でテレビの音が聞こえないという場合は吸音します。

それでは、遮音するためにはどうすれば良いのかといいますと基本的には質量が必要になります。厳密には遮音したい周波数(音の高さ)と音圧(音の大きさ)を測定してその周波数と音圧に合わせた質量を計算します。ですので、例えば壁の中にグラスウールを詰め込んだりしてもグラスウールは質量が非常に小さいため遮音効果はあまりありません。ちなみに同じ音圧では低い音ほど周波数が小さい=進行方向に向かうエネルギーが大きいため大きな質量がないと音を遮ることが出来ません。一方人間の話し声などはガラス一枚でも結構聞こえなくなります。パチンコ店などがガラス張りでもそれなりに音が止まっているのは発生している音の周波数が高いためです。

一方、吸音するときにはグラスウールのような柔らかい素材が役に立ちます。ある住宅で楽器練習室の床以外を飛散しないタイプの断熱材で覆ったことがありますが、非常に反響の少ない部屋となりシビアな練習環境となりました。例えばシンクの音がうるさいという場合はシンクの真上の天井(もしくは吊戸の下面)に吸音性の高い素材を張ると効果が出ます。吸音も遮音同様に周波数によって吸音材の密度と吸音材と壁や天井の間の空気層によって吸音率を調整します。

このように、防音といっても目的と環境をしっかり把握しないと適切な対応は出来ないのですが、とにかく少しでも効果をということであれば「遮音には質量」「吸音には柔らかい表面」を与えれば少なからず効果はあります。ある程度しっかりした対策を行いたいという方はご相談いただければと思います。(柳本)